花束書房

幕末→大正期の女性史マガジン■北村兼子研究(復刊)■編集・出版業(準備中)。

【北村兼子】言葉を研ぐ


★北村兼子の鋭くユーモアあふれる言葉を独断で選びました(随時更新)。

各発言の末尾に付記したアルファベットは出典です(一番下に明記)。



#フェミニズム

「マンに対するウーマンという区画を立てるそのことがすでに婦人にとっては侮辱である。(理由は)両性に優劣があることを承認するという観念を与えるからである」A

「男を悦ばす現状維持は辛い」A

「排日で激昂するわが同胞、排女の差別待遇で満足するとは合点が行かぬ」A

女が一時間に八十人の割合で子を産むそうな。男は去年中に一日に一人の割合で博士ができたそうな」A

「任侠は男子の通有性で、嫉妬は女子の占有物と聞く。聞いたが間違いか、男が嫉(や)いて女に知識を与えぬ。女が虐げられていても、のた打っていても、任侠な男がこれを助けに飛び出すものがない」A

「何事も男万能の世の中に少し無理な要求かもしれないが、日本には男ばかりでなくお邪魔さまながら『女』というものが三千万ばかり生きさせてもらっているということを治者の頭に持ってもらいたいのである」A

「宴会に出ても、キチンと両手を膝に、飲みたい酒も遠慮して空いた腹も飽和状態を装わねばならず、途中で男子と行き違っても見て見ぬ素振りをせねばらならず、品行は正しく、洗濯は怠らず、御飯の水加減は気に気をつけ、天真の性を抑え偽善の顔を飾り、犬に轡(くつわ)を嵌(は)め馬に鼻づらを通し、鯱こばって一生を暮し、権利知らずの義務はウンと背負わされる、肩の凝ること凝ること」C

「明治維新の際でも志士を助けたものは深窓の淑女ではなくいわゆる芸者ガールであった」「活きた社会に活きた働きは賢母良妻に期待することはできぬ」C

「家とは何である。巣である、ねぐらである。眠るときに雨露さえしのげればそれで足るではないか。その家のため精神まで束縛せられてはたまらぬ」C

下駄の高さは揃っているがよい」C

「結婚に際し、一方は処女であることを要求しても他方が童貞を守っていた男がないというのは、この性的本能が頂点に達しているときに十年の差を生じさせる不合理にもとづく。男尊女卑はここにも現れている」C

「経済的に独立できない女性は自全の策としては家庭に侵入するよりほかに途はない」D

「処女を口説くものは不良少年でなくして教育ある有妻者である。この方が不良少年よりも図々しい」D

歌いたいときは大声で歌い、泣きたいときはわっと泣いて、気分をおっ開いて暮らしたい。東洋風に感情を偽って暮らすことはもう飽き飽きした」D

「私はこれからまだまだ勉強して、他日の大成を望もう。私はこれから伸びて行かねばならぬ」D

「男が女を乞食以下と見下げていても、女から男を神さまと見あげ奉るわけには参らない」

E

「私が記者となって真っ先に振り当てられた任務は裁判所づめであった(中略)第一に驚いたことは裁判所そのものが、女性を取り扱うようになっていないことである」E



#女子教育

「私は女子に限定せられた教育を呪うものである。現に女学校で虚偽の修身を教え込まれた私が、大学の法科、何千人という男子ばかりの中に交じって男性的教育を受けて初めて、人間というものは、そんな卑屈な不自由なものではないということに目が覚めた」A

「私は女である。女であるが為め何十年大学に在っても学士にはなれない。正式の卒業も出来ないが併(しかし)しそれで好い。学問は人を造る。学問によって人にならうとするその高遠な理想に活きてゐる私は幸福である」B

「女を除外して何の普選だ、女子に学問の門戸を鎖ざしておいて何が教育の普及だ」A

「其の筋とやらは男女共学と男女混浴との区別がない。人の嫌がる賤役に服せしめ、そして賢母良妻とは何事である」

「女学校で知識のつく科目は僅少である。その僅少な科目すら間違えだらけの教え方で、女が賢くなれないよう道理がない。その女学校を出てから進むべき道は交通遮断である」A

「失業したら家庭地獄へ飛びこめ、食べられなかったら男にすがれと、結婚を避難所と決めて、おかっぱ時代から結婚を目標に調練せられ、賢母良妻をげっぷの出るほど詰め込まれている」D

私は肉体は売る時があっても学問は売りたくない。学問は肉体より尊い。百円や二百円の端金(はしたがね)に面(つら)を叩かれ、十年苦心の学問を売らうとは何事である。(中略)尊い学問をダンピングすな。売れなかったら労働者になれ、それは高尚だ。乞食になれ。そして餓えよ。更に貴い。餓えて死ね。最も尊い」B

女学校で男子礼賛、差別待遇校訂を叩き込まれ、男子に対する恭順の念をシカと蒔かれている。そのほかに宗教――とくに仏教――が女を穢れたものとして、人間という水平線から押し下げてきている。そういう観念から出発する女性であるから、一議もなく女卑を承認してしまう」C

彼女らが教わったことは大きな嘘である。先生は『女は奴隷に甘んぜよ』という耳ざわりの悪い言葉を修身に用いないで、『女は女らしく』といったような、円滑で狡猾な陰険的感化をもって限定せられた不自由な範疇のうちに女性を追い込んでしまう」C

女子教育拡張という美名のもとに、奴隷の大量生産を試みている」C

「男の事業は女が助ける、女の事業は男がぶちこわす。女はただ柔順であれと男性に便利な東洋道徳という大きな蓋をせられているが、それでは女がたまらぬ。女学校の倫理にだまされてはならぬ。せっかく眼ざめかけたその眼も鼻も東洋道徳で塗りつぶしてはならぬ」D

「女をことさらに馬鹿にする教育をやめて、男とか女とかいう性別を除き、ともに「人」としての知識を授けるがいい」G


#職業婦人とme too

「捏造の攻撃で葬られていくものは私ばかりではない。一般の職業婦人がみなこの手でやられるのだ。私は職業婦人を代表して敢然として反抗した」D

婦人記者に品行点をつけようなんか、そもそも心得違いの大関だ」

「私はいまなお、攻撃者に向かって屈しなかったことをよかったと思う。(中略)月々の給料とともに個性をすり減らしていくことは私には堪えられない」D

「告訴恐ろしさに和解を申し込んできた新聞もあるが(…)既成政党のように融通のきく世才は持ち合わさない。(…)職業婦人は貞操を文明の春風に触れさせて、伝統の氷結から解放してもらいたいと望むのである」D

「月給の高いことは人格の高いことを意味しない。月給の高いことは義務の多いことを意味する。世には権利の多いことを誇らずして、義務の多いことを自慢するものがある」D

「個性のあるものは異端者とみなされて、これを排撃するに貞操問題をかつぎ出し、型にはまらぬものは突き落としてしまう。日本は女にとっての監獄部屋だ。ご覧なさい。婦人記者の勤続年限の短いことを」D

もう怒ってもいい。激怒してもいい。いやしくも貞操問題を持ち出して、女の一生に傷をつけたるが卑劣漢を放任しておけば癖になる。(…)大きくいえば職業婦人擁護であり、女性擁護であり、汎人間主張である」D

私は怒る。天下の職業婦人に代わって、もっと朗らかに世界に活きたいと要求する」D

「そんな卑劣な男の口から、女性は陰険であり陰鬱であると説かれるからあきれる。(…)女性が陰険であるとせば、それは人並みの生活ができないためである。女権を極度に認めたからといって、どれだけの恩恵がある。ようよう人並みになっただけのことではないか」D





#リプロダクティブ・ヘルス/ライツ

「いわゆる働き貧乏とは現在の日本である。国も富み、家も豊かであれば産児制限というような不景気な悲鳴をあげるに及ばない」F1

「女が学問すれば産児率が減じ、職業婦人として脳を使うようにならばまた減じ、生活苦と闘うようにならばさらに減ずる。必ずしも避妊法を行なうから文明国の中産階級に子供が少ないとは断言できない」F1

「感冒の病原体でさえもまだ確かめられないほど未熟な医学の智識で、優生学などと人間を研究材料に使うことはまだ早い」F2

「現在の教育制度は常識養成だから、天才の児童は多くは教師に発見せられることなしに中学の入学に落第してしまう。(中略)大哲学者、大詩人、大発明家、大政治家などの大つき者は幼い時には愚物といわれたものである。現代科学のものさしでは幼児において測定することはできない。優生学を不用意に振り回すと天才をも併せて撲殺してしまうかもしれない」F2

「今日の不徹底の科学をもって、いかに無謀な優生業者といえども、強制的に去勢または妊娠不能の手術をする勇気があるかしら。もしあらば私はちょっと待ってくださいという。それは人道的に危険な仕事であり、科学の進歩はまだメンデルの研究からあまり遠く踏み出していない幼稚なものであるからである」F2

無謀な優生運動は、健康者が病人に対する挑戦である多数の力によって少数の弱者を谷底に蹴落とそうとするものである。健康者は不健康者を厭殺するだけの特権があるだろうか」F2


#廃娼に対する見解

「婦人問題は多種多岐にわたっているが、しかし出発点も帰着点もひとつである。共学の実行によって婦人の地位が向上すれば、参政権はおのずから獲得せられる。政権をつかんだうえで廃娼なり、制度改革を断行すればよい」C

私は『廃娼』論者ではない。『娼廃』論者である。つまり廃の字を他動詞としないで自動詞とする。婦人の地位が向上すれば『娼は廃る』ので、『娼を廃する』のではいけない」C

「廃娼論者も、参政権論者も、共学論者も羅馬(ローマ)へ通ずる道は多くとも目的はひとつであるから、小異を捨てて大同につき、目的達成に努力せねばならぬ」C


#国際・政治・平和

「尚武国――これが間違いの出発点だ。資力の伴わぬ尚武ほど危険なものはない。豚に牙をくくりつけて猪だとは笑わせる。文明の真髄は思想をもって暴力を抑圧するにある」A

領土奪取など旧式の夢を見ている人が上級の軍人にあるとは時代錯誤」A

あまり遠からぬ将来に、国家は私を必要とする時期があろうと思うだけなのである。自惚(うぬぼ)れか何かは知らぬがなんだか左様な暗示を受けているような気がしてならない」A

「男性文明は機械を造った。鉄砲も水雷も飛行機も潜水艇も造ったが、しかしそれをすぐ戦争に使う。理化を研究したが毒瓦斯も殺人光線も人を殺す方面に用いる。人を押しのけて自ら幸福を独占しようとする掠奪主義がいけない。なにが贅沢だといっても軍事費のごときは贅沢を通り越した有害な浪費である」D


【出典】

A『ひげ』

B『千里山』

C『全関西婦人連合会』

D『女浪人行進曲』

E『竿頭の蛇』

F1「産児調節問題私見」(『社会事業研究』昭和3)

F2「優生学、ちょっと待って」(『社会事業研究』昭和4)

G「参政権さえ与えたら」(『婦人倶楽部』大正15)


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